自転車のクランクを換えるだけで、乗り心地には相当な変化が出ます。ただし、クランクにはたくさんのポイントがあって、自分に適切なクランクがどんなものなのか、初心者のうちはなかなかわからないのではないでしょうか。自分に合わないクランクを選んでしまうと、力が伝わりづらくなったり、乗りにくくなったりと、デメリットも大いにあり得ることです。
また、足が短い日本人の場合、考えなければならないのがクランク長です。クランク長にもいろいろ種類があって、一般的には160mmの短いものから、長ければ180mmぐらいのものもあります。たいていはその中間の170mm程度を選ぶ人が多いですが、足が短いとやはりクランク長も短いものを選ばなければならないのでしょうか。
クランク長は自転車の乗りやすさを決める重要ポイント
ステムの長さやサドルの高さなどを少し変えるだけで、自転車の乗り心地には大きな違いが出ます。それらと比べて一見地味ですが、実はクランク長の変更もかなり影響が大きいです。
たとえば、今より長いクランクを選んだ場合、これまでより足を大きく回転させることになります。その結果、馬力が出せるなどのメリットが生まれますが、自分に合わない長さだと疲れやすくなりますし、クランク長が長いほど、車体を少しでも傾けると地面に接しやすくなる点にも注意が必要です。
クランク長の決め方
では、結局、クランク長はどのぐらいが最適なのでしょうか。これは個人差が大きいので、人それぞれとしか言えないでしょう。人によって、身長も体重も体格も違います。また、背格好は同じでも、筋肉の付き方や足の長さ、柔軟性など、一つとして同じところはないはずです。
一応の目安として、身長の10分の1の長さがちょうどいいクランク長と言われることはありますが、これではざっくりしすぎでしょう。もう少し細かい計算の仕方では、身長に0.097をかけた数字があります。身長170cmの場合、170×0.097=16.49cmです。この場合、165mmのクランク長がベストということになります。
しかし、先ほども述べたように、身長は同じでも足の長さは人それぞれです。身長170cmの人全員、165mmのクランク長がベストサイズとは限りません。では、どのような基準で考えるべきか、参考までに海外のプロ選手のクランク長を見てみましょう。
海外プロのクランク長
何度も言いますが、万人に当てはまる基準ではないですし、足の長さまで公開している選手が少ないため、あくまで参考として捉えてください。
ケニア出身でイギリス国籍を持つクリス・フルーム選手の場合、身長185cmに対して、足の長さ(股下)は89cmです。クランク長は175mmのものを使用しています。
イタリアのヴィンチェンツォ・ニバリ選手の場合、身長が181cmで、足の長さが87cmです。以前は172.5mmのクランク長を使用していました。一度175mmのクランク長に換えて、調子が悪くなったことがあります。
以上の2選手のデータをもとに、ペダルが体に最も近くなった時点の長さ、つまり、足を曲げて一番縮んでいる時の長さが、足の長さのどの程度の割合になっているかを調べてみました。
その結果、クリス・フルーム選手の足が一番縮んだ時の長さは、89-17.5×2=54cmです。ヴィンチェンツォ・ニバリ選手は、調子が良かった172.5mmのクランク長の場合、87-17.25×2=52.5cmになります。
フルーム選手の54cmは、足の長さの60.7%です。ニバリ選手の52.5cmも足の長さの60.3%と、だいたい似たような数字になります。一方、ニバリ選手が調子を落とした175mmのクランク長の場合、同じように計算すると、足が最も縮んだ時の長さが87-17.5×2=52cmになりますので、割合は59.8%です。
この結果から、ペダルを回して足が最も縮んだ時の長さが、足を伸ばした時の長さに対して60%をやや超えるぐらいが、最適なクランク長ということができます。それを身長175cm、足の長さ79cmの日本人らしい短足体型に当てはめてみましょう。
この場合、市販のクランクで一般的に最も短い160mmだと、79-16×2=47cmとなるため、足の長さの59.5%です。それより長いクランク長では、165mmで58.2%、170mmだと57.0%と、いずれも60%を大きく下回ってしまいます。
身長175cmでクランク長160mmを使っている人は少ないのではないでしょうか。一般的には170mmが多く選ばれるので、上の考え方によれば、足の長さに対して長すぎるクランク長を選んでいることになってしまいます。海外のプロ選手のクランク長を参考にするのなら、思った以上に短いクランク長を選ぶ必要がありそうです。
クランク長が短いほうが有利?
ただし、海外のプロ選手がそうだからといって、短足の日本人が同じようにすることには問題があります。
まず、クランク長が短いほどパワー不足に陥ります。海外の選手は日本人よりも足が長い上に、プロですから当然、一般人よりパワーも格段にあります。比率的に短めのクランク長を選んでも乗りこなせるということを忘れてはなりません。
いずれにせよ、足が長いほうが自転車に有利なのは間違いないでしょう。もともと足が長いので、170mmのクランク長でもショートクランクになります。だから、ロングクランクとショートクランクの両方の利点を享受できるわけです。
彼らに比べて格段に足の短い我々の場合、160mmでも長すぎることになってしまいます。足の長さに対して適切とされる長さのクランク長を選んでも、必ずしも良い効果ばかり出るとは限らないでしょう。とはいえ、短足体型の日本人には、自分たちで思っている以上に短いクランク長がちょうどよいというのは確かです。
おすすめのクランクのメーカーとクランクセット
結局、自分に適したクランク長を選ぶには、いろいろ試してみて、乗り心地で判断するしかありません。しかし、手当たり次第に交換するのは手間ですし、コスト的にも厳しいのではないでしょうか。そこで、ロードバイクのクランクで定評のあるメーカーから、おすすめを以下に紹介します。
日本が世界に誇る自転車パーツのメーカーが「シマノ」です。シマノにはいろんなクランクセットがありますが、おすすめは「105 R7000」です。最新テクノロジーを駆使し、ペダリングの軽さや回しやすさを追求しました。クランク長は160mmからあります。
同じく、日本の「スギノ」も定評あるパーツメーカーです。スギノにもいろんなクランクセットがありますが、サイクリング用、ロードレース用、トライアスロン用など、さまざまな用途に対応する「OX2」がおすすめです。こちらもクランク長160mmからあります。
日本の東京サンエス株式会社が展開するオリジナルブランド、「ディズナ」のクランクセットもおすすめします。なかでも、日本人の胴長体型に合わせて開発された「ラ・クランク」が一押しです。クランク長のサイズ展開が幅広く、130mmのショートクランクから選べます。135mm、140mm、145mmと、5mm刻みで160mmまであり、それ以降は、162.5mm、165mm、167.5mm、170mmと、2.5mm刻みの多様なラインナップです。
短足でもモテる方法はある
なお、短足で困るのは、自転車のクランク長だけでなく、見た目が悪くてモテないことです。確かに物理的に足を伸ばすのは、成人男性には難しいでしょう。しかし、ファッションでカバーすることは可能です。短足でもスタイルを良く見せるためのファッションセンスを磨きましょう。
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