短足猫が生まれた理由
短足猫が生まれたのは、1944年のイギリスとされています。その経緯は、1944年の当時は遺伝子分析能力が乏しかったため自然発生したか不明であるとされていましたが、後年の遺伝子検査レベルの向上により突然変異であることが明らかになっています。
ちなみに、短足猫の代表例とも言えるマンチカンの名前は、オズの魔法使いに登場するマンチキンから命名されたとされています。マンチカンは、英語ではMunchkinと書くので原語のままではマンチキンと呼ばれています。マンチキンという言葉には、小人という意味があり見た目からそのまま命名されたと言えます。
マンチカンのような短足猫に関しては、その異常な足の短さから長年にわたって生命倫理に照らし合わせて論争が巻き起こってきました。しかしながら、昨今は世界的にマンチカンがその愛らしい姿から人々の注目の的となり続けています。従って、その独特な身体的特徴が奇異に見られるということはなく、むしろ可愛らしい個性として広く受け入れられているのです。
一般的な猫から短足猫は生まれるのか
通常、一般的な猫を組み合わせて交配することにより短足猫が生まれることはありません。しかしながら、マンチカンに関してはその異常に短い足を危惧したアメリカのブリーダーがマンチカンなどの短足猫と一般的な猫を異種的な交配をさせてきました。この異種的な交配に関しては、生物学や獣医学の有識者を中心に生命倫理に抵触するのではないかと大きな論争を巻き起こしました。
しかしながら、その後は世界的に短足猫の愛らしい姿が受け入れられるどころか、高い人気を誇っているためにこうした異種的な交配は行われなくなり現在に至っています。こうした異種的な交配が行われてきた歴史的な経緯から、特にマンチカンなどについては様々な色をした短足猫が存在しています。
奇形とは何か
奇形というのは猫に限らず様々な動物に関して存在していますが、一般的には先天性の発育状況における外見上の異常であると考えられています。遺伝子レベルでの内的要因を原因とする奇形と、感染症などの外的要因を原因とする奇形があります。
個々人の感情の起伏や性格の違いなどは奇形とは見なされず、通例的に個性とされています。見た目の部分などの外見上のことにのみ、奇形とするのが現在の学術的な認識になっています。
猫の奇形などはあり得るのか
動物などにおいて奇形の報告は広くされていますが、猫においてもかわいそうながらわずかながら奇形の報告がなされています。しかしながら、猫に関しては他の動物よりも小型であるためか外見上が著しく他の猫と違う程度の奇形はあまり見受けられないようです。
猫の奇形で有名なところは、骨軟骨異形成症候群があげられます。あまり聞きなれない特異な名前ですが、ざっくりと説明すると骨の形成に異常が生じてしまう疾患です。関節の部分に本来はあるべき軟骨が正常に浸透していないことが生じてしまうとされています。この疾患は程度に大小様々ありますが、良く見受けられる例としてはスコティッシュフォールドの折れ耳がこれにあたります。
スコティッシュフォールドは、1961年にマンチカンのときと同じようにイギリスで最初の個体が生まれました。このスコティッシュフォールドの祖とも言うべき猫の親は通常の耳をした猫であったと言われており、これもマンチカンと同様に後年の遺伝子検査技術の発展により突然変異であることが判明しています。
スコティッシュフォールドは、その後ブリーダーによりアメリカに渡りました。発祥の地のイギリスで有名なブリティッシュショートヘアという猫にあやかって、アメリカンショートヘアとして世界的に人気を博しました。
しかしながら、スコティッシュフォールドは耳が折れているというその特性から、耳垢が適切に排出されない耳垢排出不全という疾患に悩まされることになります。折れ耳は通常の猫よりも耳に異物や感染症源が入りにくいことから外的要因による疾患のリスクは低いものでしたが、逆に耳の内部に溜まってしまう耳垢に関しては上手く排出をすることができないという不全症候群に陥ることになってしまいました。
そのため、現在は定期的に動物病院や獣医師の手を借りて、スコティッシュフォールドの耳垢をきちんと排出させてあげられるように定期的なケアが行われています。こういったケアがスコティッシュフォールドを飼育する上での大変な部分ではあります。
また、ごくわずかな例としてつまり耳を生じさせるスコティッシュフォールドも報告されています。つまり耳とは、折れ耳に加えてさらに内側に折れ込むようにして刺さってつまるような形状をしている耳のことです。
つまり耳のスコティッシュフォールドの場合には、折れ耳のスコティッシュフォールドよりもさらに耳垢排出不全の度合いが強いので定期的な耳垢排出のケアが必要になります。また、折れ耳が耳内部に向かって突き刺さることによる健康面への影響も勘案する必要があるので、つまり耳のスコティッシュフォールドのお世話をするハードルはいくぶんか高いと言えます。
短足であることによる障壁
マンチカンなどの短足猫に生じてしまう障壁としては、関節炎などの身体への負荷が高いことによる疾患があげられます。関節炎は人間においても高齢化すると半月板にあるコラーゲンが減少することにより、罹患することの多い疾患になっています。
マンチカンなどの短足猫の場合には、高齢に限らずとも幼いうちから足が短く相対的な負荷が強いのでこうした関節炎などの疾患に罹患しやすいのが問題になっています。また、マンチカンなどは成長期においてもこうした関節炎に絡んでくる場合があるので、正常な成長を妨げる恐れがありますので、定期的に獣医師などの診察を受けることが欠かせません。
また、マンチカンなどの短足猫のためにゲージを用意する場合には上の階に上がりやすいように段差を低くするなどの対策を講じる必要があります。一番は平屋建てのゲージにしてしまうことですが、あまりゲージに広さが取れない場合にトイレとエサ箱が著しく近くなってしまうことがあるので要注意が必要です。
短足猫が暮らしやすい生活
短足猫が暮らしやすい生活としては、段差のないバリアフリーな空間があげれます。人間でいうところのおじいちゃんおばあちゃんが暮らしやすい環境が短足猫にとって暮らしやすい環境であると言えます。
しかしながら、マンチカンなどの短足猫は運動不足に陥りやすい動物なので運動できるスペースを確保しあげることが重要です。短足猫に限らず猫にとって運動する機会となり得るのが、野生の本能に眠る捕食者行動です。
トムとジェリーを見たことのある人なら分かるかもしれませんが、猫は小さくてすばしっこいものを追いかけるのが大好きです。また、実際に猫はネズミ捕りとしても大活躍してきた歴史があります。イギリスの首相府には、代々にわたってネズミ捕りのために猫が飼われているのが有名なところです。このように猫はおとなしそうに見えて闘争本能をきちんと持ち得ている生き物なのであることが分かります。
猫の奇形を乗り越えるには
スコティッシュフォールドやマンチカンのような折れ耳や短足である、いわば奇形をどのようにして乗り越えるべきでしょうか。マンチカンの短足もスコティッシュフォールドの折れ耳もその可愛らしい姿をそのまま個性として肯定的に捉えて尊重する見方もあります。
その一方で、マンチカンの場合には関節炎、スコティッシュフォールドに場合には耳垢排出不全などの疾患として具体的な日常生活を送る上での障壁や問題となり得る場合もあるのです。そうした懸念リスクなどに対しては、飼い主が適切に継続的なケアを施すことが重要です。
マンチカンなどの短足猫に対しては、関節炎を抑止するために体重管理を厳密に行うことが有効です。猫の体重管理と聞くといささか難しいのではないかと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際のところはエサをあげる回数と内容量をきちんと管理してあげることで適切に体重管理をすることができます。
家猫の場合には、外界と何か他のものを食べるということもありませんので管理しやすいと言えます。体重管理を厳密に管理することで、足の関節への影響を最小限に抑えることができるようになります。最近のキャットフードには、体重減少を目指したダイエットキャットフードも販売されているので、そういった商品などを取り入れてみるのも良いかもしれません。
スコティッシュフォールドの場合には、折れ耳の程度では問題ありませんが、つまり耳になると話は変わってきます。なぜなら、つまり耳は、人間でいうところの巻き爪に近いものがあり、耳の内部に向かって突き刺さるように浸食してくることで大きな疾患として問題になり得るためです。
こうしたつまり耳を抑止するためには、獣医師による定期的な診察や、折れ耳がつまり耳まで重症化した際には迅速な治療が必要です。また、つまり耳や折れ耳の場合にはきちんと耳垢を排出することが難しいので、飼い主が定期的に耳垢の排出を行ってあげる必要があります。
耳垢排出不全を放置しておくと感染症や思わぬ病気のリスクを秘めていることがあるので、注意が必要です。いずれにしても、猫を飼育する際には定期的な診察を獣医師に頼むことが重要であることに違いありません。こうした飼い主の責務は動物愛護法に明記されているとおりで、きちんとした飼育上のケアを行っていくことが求められています。
猫にとっても過ごしやすい健康的な生活を送らせてあげる上では、こうした面倒くさい健康面でのアフターケアを欠かさずに行わなければならないと言えるのです。そうすることで、飼い主ともより距離感を縮めることができ、仲良く暮らすことができるようになるのです。
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